ピンボールとは?

岐阜で活躍する女性の紹介
〜岐阜で活躍する女性からあなたへのメッセージ〜

「肯定的な懐疑心」
という言葉をよく使います。
慢心せず、本当にこれでいいのか、
常に自分の活動や行動を
振り返るよう意識しています。


一般社団法人サステイナブル・サポート 代表理事
後藤 千絵(ごとう ちえ)さん(岐阜市)

【2023年6月26日更新】

主に若者や発達障害・精神障害のある人たちの就労支援事業を展開する、一般社団法人サステイナブル・サポート。代表理事の後藤千絵さんは、就労移行支援事業所「ノックス岐阜」、就労継続支援B型事業所「アリー」「シャンツェ」などを運営しながら、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指していきたい、と力強く語ります。

就職に躓いた経験から
 アメリカに留学して、ニューヨークの大学で心理学を学びました。帰国後に就職先を見つけようとしましたが、当時の日本は就職氷河期のまっただ中でした。私は幸いにも派遣社員を経て、ご縁があって外資系の企業に正社員として働くことができたものの、日本では一度人生のレールを外れてしまうと、軌道修正が難しいことを実感しました。
 その後、結婚して夫の出身地である岐阜にIターンしました。こちらに来て、人材紹介会社に就職しましたが、妊娠、出産、育児で仕事を離れました。子どもが2歳になり、また働こうと就職先を探していたときに出会ったのが、障害者向けの就労支援の仕事でした。
 まったくの未経験からのスタートで不安はありました。ただ、私自身が就職に苦労しましたし、障害というのは身近なもので、誰もが障害者になる可能性があり、思わぬことからレールを外れ、働きたいのに働けないという状態になってしまうことに気づき、とても大切な仕事だと、やりがいを持って取り組んでいました。
 ところが、その会社が解散することになり、どうしようと思いましたが、自分でやろうと起業を決意しました。当時、障害者の福祉サービスは知的障害のある方に向けたものが多く、発達障害、精神障害のある方への支援はほとんどありませんでした。発達障害、精神障害があっても知的に遅れがなく、高校や大学を卒業された方も多数いながら、就労面での支援や理解が十分ではなかったのです。そのための仕組みづくりを、と2015年に一般社団法人サステイナブル・サポートを立ち上げて、就労移行支援事業所「ノックス岐阜」を設立しました。

社会に参加する機会を
 ノックス岐阜に続いて開所したのが、就労継続支援事業所「アリー」です。女性の障害者に向けた取り組みで、大人の女性が安心して通える事業所をコンセプトにしています。事業の一環として運営している宿泊施設「帰蝶」は、2022年の「ぎふ女のすぐれもの」にも選ばれました。さらに今年、新たな就労継続支援事業所「シャンツェ」を開き、保護猫活動や猫カフェ「猫影」の運営を始めました。
 昔ながらの福祉事業所のイメージを変えたいです。弊団体を利用される人の多くは、見た目には障害があるとわかりません。身だしなみや服装にも気を遣っています。同級生が結婚したり、仕事で活躍したりしている一方で、自分には障害があって福祉事業所に通っている状況を受け入れるのが辛い、という方が少なくありません。支援を受けたいというよりも、自分が社会のなかでこんな役割を担っている、と言える場所をつくりたいと思っています。
 たとえば、アリーの取り組みでは、岐阜提灯や美濃和紙など、伝統工芸品の仕事にも携わっており、自分が価値のある仕事、地域の伝統文化を支える仕事をしているんだと誇りが持てます。帰蝶に宿泊された方も、障害者の施設として泊まっている方はほとんどいなくて、素敵なところだなと思っていただいています。チャリティーとしてではなく、価値あるものとして認めていただくことこそ大事で、障害者の支援に結びつくと考えています。障害福祉のイメージを変えていく第一歩として、私たちは場づくり、機会づくりを進めています。

福祉の枠を超えた活動
 既存の福祉制度のなかだけでは、やりきれないことがたくさんあり、福祉の枠を越えた支援活動にも取り組んでいます。そのひとつが、今年から始まった「ワーク・ダイバーシティ・プロジェクト」です。
 障害者の就労支援は、障害診断のある方にしか使えません。現状は仕事と治療の両立に困難を抱えるがんサバイバーの方や、LGBTQ(性的少数者)の方などに寄り添った支援を行う制度がありません。障害者ではないものの、働きづらさを感じている方々への就労支援をしていくプロジェクトが日本財団と岐阜市の助成・補助で始まり、弊団体が運営を担っています。
 そのほか、学生・若者を対象としたキャリア支援事業など、制度の狭間にあり支援のニーズが見えづらい人への支援体制の構築に取り組み、だれひとり取り残さない支援の実現を目指しています。

初心忘るべからず
 夫と娘の3人暮らしで、基本的には家族の食事を作るなど、家に帰れば主婦業です。コロナ禍前は家族旅行によく出かけていましたが、最近は休日も仕事関連の勉強を趣味のようにしています。あと、保護猫カフェをやるくらいですから、猫が好きで、自宅でも保護猫を2匹飼っていて、癒やされています。
 経営者として、経営はもちろんのこと、社会情勢の変化、知識のアップデートなど、さまざまなことを検討し、対応していかなくてはいけない毎日ですが、私はなぜ人の人生に関わる責任重大な仕事を始めたのだろうと、そこの初心を忘れないよう心がけています。
 目の前の、働きたいという気持ちがありながら働くことができない人を笑顔にしたい、というのが私たちの一丁目一番地。ちょっとの支えとか、ちょっとの理解とか、だれかの寄り添いがあれば人生が変わる人たちがたくさんいるのに、それがないがために、立ち止まってしまう人がいる。こうした人を含めて、誰もが安心して自分らしい生き方ができるようにしたい。そのときの気持ちを、いつまでも大切にしたいと思っています。